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瑕疵担保責任免除特約を規定する?

瑕疵担保責任に関する内容は、当事者間の特約によって変更することができます。したがいまして、売主の瑕疵担保責任を全て免除する特約(瑕疵担保責任免除特約)や軽減する特約(瑕疵担保責任限定特約)のいずれも原則として有効です。

近年、特に、土壌汚染については、不動産取引実務において最も重要な問題の一つとして認識されるようになり、環境省の設置した「土壌汚染をめぐるブラウンフィールド対策手法検討調査検討会」の報告書においては、土壌汚染の発生率について、我が国における法人が所有する宅地などのうち、工場・倉庫用地については35%の確率で土壌汚染が発生していると推計されています。また、裁判例においては、土地の売主に対し、瑕疵担保責任に基づいて多額の賠償義務を課すケースが散見され、中には事業に深刻な影響をもたらすような億を超える多額の賠償責任を課すケースも見られるようになりました。

このような状況下においては、買主及び売主いずれにとっても、売買契約書において瑕疵担保責任免除特約を規定するかどうかという問題は最も重要な交渉課題の一つといえます。

売主の立場では、売買契約書において是非とも瑕疵担保責任免除特約を規定しておきたいところです。

しかし、瑕疵担保責任免除特約は、どんな場合にも有効となるわけではありません。

民法上、瑕疵担保責任免除特約が締結されていた場合であっても、売主が瑕疵の存在を知りながら告げなかった事実等には売主は免責されないと規定されておりますが(民法572条)、裁判例においては、買主保護の観点から、より広く、瑕疵担保責任免除特約を失効させる解釈を行っています。

具体的には、裁判所は、以下の事案において、瑕疵担保責任免除特約の成立を認めず、あるいは特約の効力を失わせ、売主に賠償義務を負わせています。

裁判例 事案の内容
東京地判平成20年3月31日
ウエストロー・ジャパン
瑕疵担保責任免除特約の締結にあたって、売主が瑕疵の存在を知りながら買主に告げなかった。
東京地判平成19年9月27日
ウエストロー・ジャパン
売主・買主が、売買契約前の汚染処理工事によって瑕疵が除去されたことを前提として瑕疵担保責任免除特約を締結した。
札幌地判平成17年4月22日
判タ1203号189頁
重要事項説明書に、売主であるBは瑕疵担保責任を負わないと記載されていたものの、契約書において瑕疵担保責任免除特約を合意しなかった。
静岡地判平成15年8月19日
判タ1187号247頁
買主が実印を押印して提出した書面には、売主の瑕疵担保責任を免除する内容の記載があったが、売主がこの文言を買主に十分に理解させたうえで承諾してもらう手続を踏まなかった。
東京地判平成15年 5月16日
判時 1849号59頁
瑕疵担保責任免除特約が合意されていたものの、土地引渡し後に発見された地中埋設物は、従前売主が依頼した業者による建物の解体・撤去の際に残置されたものであった。

上記の裁判例を前提とすると、売主の立場として、買主に瑕疵担保責任を免除してもらいたい場合、以下の点に留意する必要があると思います。

  • ① 重要事項説明書で、「売主は瑕疵担保責任を負わない」と記載するだけでは不十分であり、売主・買主双方が調印する売買契約書において瑕疵担保責任免除特約の内容を記載しておくべき。
  • ② 瑕疵担保責任免除特約の適用対象場面については、具体的に規定するべき(現状売主側で把握している土壌汚染・地中埋設物のみに関する瑕疵担保責任を免除させる趣旨なのか、あるいはこれ以外の瑕疵が発見された場合にも一切の瑕疵担保責任を免除させる趣旨なのか等)。
  • ③ 売買契約締結前に、買主に対し、瑕疵担保責任免除特約の内容についてよく説明しておくべき。
  • ④ 売買契約締結前に、買主に対し、瑕疵の存在について認識している情報(土地に土壌汚染・地中埋設物が存在するのか、あるいは存在する可能性があるのかどうか等)を説明すべき。

裁判所は、土地の売買契約の解釈においては、買主側を保護する傾向にありますので、土壌汚染又は地中埋設物に関する売主の瑕疵担保責任を免責しようとする場合には、上記のように、契約書の内容のみならず相手方との交渉方法も含めて細心の注意を払う必要があります。

他方、言うまでもないことですが、土地の買主としては、瑕疵担保責任免除特約を売買契約に盛り込むことには慎重になるべきでしょう。

もちろん、事業者の方の場合は、相手方とのパワーバランス等によっては、ビジネス上の判断として、売買契約書から瑕疵担保責任免除特約を削除することができないという事情も考えられます。

しかし、仮に、ビジネス上の理由から、売買契約書に瑕疵担保責任免除特約が規定されていても土地を購入したいという思いに駆られたとしても、その土地を購入することによって得られるメリットが、購入と引き替えに負担することになる法的リスクに見合ったものなのかどうかについては、真剣に検討する必要があります。このような検討を経ないまま安易に売買契約書に瑕疵担保責任免除特約を規定することは、極めて危険な行為です。

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