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土壌汚染に強い弁護士トップ > FAQ > 売主の責任の期間制限について > 土地を購入し、引き渡しを受けてからすぐに土壌の調査を業者に依頼しましたが、引き渡しから6か月を経過した後に業者から、地中に土壌汚染や地中埋設物が存在することを知らされました。この場合、売主に除去費用を請求することはできませんか。売主も買主も株式会社です。

土地を購入し、引き渡しを受けてからすぐに土壌の調査を業者に依頼しましたが、引き渡しから6か月を経過した後に業者から、地中に土壌汚染や地中埋設物が存在することを知らされました。この場合、売主に除去費用を請求することはできませんか。売主も買主も株式会社です。

売買契約書において、買主の検査通知義務が免除されていない限り、売主の瑕疵担保責任に基づいて除去費用を請求することはできない可能性が高いです。もっとも、買主としては、売主の説明義務違反や浄化義務違反・除去義務違反を主張して除去費用の賠償を求めることができる場合があります。

解説

買主は、瑕疵の存在を理由として土地の売主の瑕疵担保責任を追求する場合、以下の期間制限に服することになります。

  • ① 土地の引渡しから10年(ただし商行為の場合は5年)で時効にかかります。
  • ② 商人間の売買では、買主は、土地引渡し後6か月以内に瑕疵の原因となる土壌汚染や地中埋設物を発見し、売主に通知する必要があります。
  • ③ 土壌汚染や地中埋設物の発見から1年以内に損害賠償請求をする必要があります。

このうち、②の、いわゆる買主の検査通知義務は、土地の売主の瑕疵担保責任を追及しようとする買主にとって最も注意すべきポイントのうちの一つです。

土壌汚染も地中埋設物も、いずれも地表を見ただけではその有無を確認することはできませんので、専門的な調査が必要となりますし、相当程度調査期間もかかります。広大な土地を売買した場合などにおいては、長期の調査期間を見込まねばならないケースもあるでしょう。

そうすると、買主としては、土地の引渡し直後から土壌汚染調査・地中埋設物調査を実施しないと土地引渡し後6か月以内に瑕疵の原因となる土壌汚染や地中埋設物を発見することができない場合もあり得るのです。土地の買主の方は、少なくとも、多額の資金を投じて広大な土地を事業用地として購入するような重要な取引を行った場合などには、簡易なものでも結構ですので、土地引渡し後速やかに土壌汚染調査・地中埋設物調査を実施することを強くお勧めします。「多少の土壌汚染や地中埋設物があってもうちは困らないから」といって土壌汚染調査・地中埋設物調査を怠って買主の検査通知義務に違反してしまうと、将来的に土地を第三者に売却した後に土壌汚染や地中埋設物が発見された場合、当該第三者に対して巨額の浄化費用・除去費用の賠償義務を負担させられても、売主には何も請求できなくなってしまう可能性があります。

本件についても、買主及び売主のいずれも株式会社とのことですから、商人間の売買にあたります。そうすると、引き渡しから6か月を経過した後に土壌汚染や地中埋設物が存在することが判明したのですから、原則として、買主の検査通知義務違反により買主は売主に対して瑕疵担保責任に基づいて損害賠償請求をすることができません。

もっとも、買主の検査通知義務を売買契約における特約で免除することは可能です(買主の検査通知義務の排除特約)。したがいまして、売買契約書における規定の内容次第では、買主の検査通知義務の排除特約の成立が認められ、引き渡しから6か月を経過した後に土壌汚染や地中埋設物の存在が判明した場合であっても、買主が売主の瑕疵担保責任を追及できる場合があります。

実際に、以下のようなケースにおいて、買主の検査通知義務の排除特約の成立が認められています。

裁判例 買主の検査通知義務の排除特約の成立を認めた根拠
東京地判平成23年1月20日
判タ1365号124頁②事件
土地引渡後といえども、廃材などの地中障害や土壌汚染等が発見され、一定程度以上の損害が発生した場合には売主の責任と負担において速やかに対処すべき旨の特約が合意されていた。
東京地判平成21年4月14日
ウエストロー・ジャパン
売買契約書には、土地に隠れた瑕疵(土壌汚染並びに産業廃棄物等の地中障害を含む。)があり、買主が瑕疵を発見したときは、土地の引渡日から1年間に限り、売主は、民法570条に定める瑕疵担保責任を負うと定められている。

また仮に、買主の検査・通知義務違反によって売主の瑕疵担保責任を追及できない場合には、買主としては、売主の説明義務違反や浄化義務違反・除去義務違反を主張して除去費用の賠償を求めることができる場合があります。

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